印象に残った言葉 17 ―お前が思うほどこの世は美しくない―
~印象に残った言葉~
「お前は······何も解っていやしない。
お前が思うほどこの世は美しくはない」
今村翔吾 , 「海を破る者」, 文藝春秋 , 2024年 , 156p
~印象に残った理由・感じたこと・思ったこと~
この言葉を発したのは高麗人で、
自国の民が“敵”として目の前に立っている状況だった。
彼らは自らの意思で戦っているわけではなく、
服従させられ、命令に従うしかなかった人々だ。
説得しようとする相手の理想を、
この一言は真正面から切り捨てる。
その響きは冷たく、現実的で、容赦がない。
すべてを理解したうえで、あえて理想を手放した人の言葉のように感じた。
けれど同時に、
どうにか信じたい、どこかに希望があるのではないかと探し続けた末に、
それでも叶わない現実を突きつけられた、
深い苦しみと痛みもにじんでいるように思えた。
「この世は美しくない」という断言は、
諦めや冷酷さだけではなく、
信じようとしたからこそ生まれた絶望なのかもしれない。
その言葉の裏に隠された葛藤や悲しみが強く伝わってきて、
とても印象に残る一節だった。