『2.43 清陰高校男子バレー部①』感想・あらすじ|灰島と黒羽、弱小バレー部の始まり
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バレーボールの物語だけれど、試合の派手さよりも「人と人がぶつかりながら、少しずつ近づいていく過程」が心に残る一冊でした。
シリーズの始まりとなる本巻は、連作短編3話で構成されています。灰島と黒羽の中学時代から高校進学後までを、周囲の人物たちの視点も交えながら描いた、青春スポーツ小説です。
本の概要
タイトル:2.43 清陰高校男子バレー部 ①
著者:壁井ユカコ
ジャンル:青春小説
出版社:集英社文庫
発行年:2015年
ページ数:270p
あらすじ(ネタバレなし)
東京の強豪中学バレー部で深刻なトラブルを起こしてしまった灰島公誓(はいじま・きみちか)は、子ども時代を過ごした母方の郷里・福井へ転居し、幼なじみの黒羽祐仁(くろば・ゆに)と再会する。
ほとんど活動も行われていなかった紋代中学のバレー部で、一人黙々と練習を始める灰島。
ずば抜けた身体能力を持ちながら、プレッシャーに弱く肝心なところで失敗しがちな黒羽と、バレーへの圧倒的な情熱と才能ゆえに、周囲との摩擦を引き起こしてばかりの灰島。
正反対の二人は衝突しながらも、セッターとアタッカーのコンビとして少しずつ成長していく。けれど、中学最後の県大会で二人は大きくぶつかり、絶縁状態のまま、地元の七符清陰高校へ進学する。
本巻では二人の物語に加えて、体質のハンデを抱えながら努力を続ける棺野や、清陰高校男子バレー部主将・小田など、周囲の人物たちの姿も描かれます。
弱小チームが本格的に動き出すのはここから。その「始まり」を描いた一冊です。
印象に残ったポイント
① 灰島くんの裏表のないまっすぐさ
まず一番は、灰島くんのキャラです。
人の気持ちを読むのが苦手で、思ったことはそのまま言ってしまう。けれど、裏表がなく、すごいことは素直に「すごい」と褒める。
個人的には、こういうタイプの人に褒められたときが、一番心からガッツポーズしたくなります。
バレーに対しては人一倍の情熱を持ち、自分のバレースタイルを貫く姿も魅力的でした。国語が苦手なところなど、人間味がある一面も含めて、目が離せない主人公です。
② 主役だけじゃない。棺野のひたむきな努力
体質のハンデを抱えているからこそ人一倍努力してきた棺野の一面をわたしはそのとき知ったのだった。〔中略〕つらいだけの基礎練にも棺野は誰よりひたむきに取り組んだし、決して部活を休まなかった。(176p)
いろいろな誘惑に打ち勝ち、ただひたむきに努力する姿はすてきで、かっこいいなと思いました。
そして、気づいた側の立場になってみたとき、今まで見ていた姿は、みんなが知らないところで努力を積み重ねてきた姿なのだと思うと、心に響きました。
派手なプレーだけではなく、こうした「見えない努力」を描いてくれるところも、この作品の好きなところです。
→ 詳しくは「印象に残った言葉 1 ―基礎練にもひたむきに取り組んだ―」へ
③ 灰島を部に誘う、あの一言
「入ってくれんか、灰島。一人でやってたかってつまらんやろ。ほやで球技大会でもバレー選んだんやろ?」(233p)
この言葉は、ただ灰島をバレーボール部に誘いたいだけではないように感じました。
部活に入らないままでは、持っている能力や才能を発揮できない。その状況への歯がゆさが、福井の方言のやわらかさと一緒に伝わってくる一言です。
才能があるから放っておいても大丈夫、ではなく、誰かが声をかけるからこそ、人はもう一度コートに立てるのかもしれません。
→ 詳しくは「印象に残った言葉 2 ―ほやで球技大会でもバレー選んだんやろ?―」へ
④ 終盤の、まっすぐすぎる一言
終盤にも、思わず目を見開き、一瞬呼吸をするのを忘れてしまうほど、心を掴まれる一言がありました。
ここは物語の核心に触れる場面なので、この記事では詳しくは触れません。ただ、こんなにもまっすぐな気持ちをぶつけられたら、グッとこない人はいないと思います。
→ ネタバレに触れる感想は「印象に残った言葉 3 ―なあ、もういいやろ…。戻ってこいや―」へ(※ネタバレ注意)
読んだ感想
読み終えて残ったのは、バレーの上手さだけが人を強くするのではない、ということでした。
灰島のように情熱があるからこそ、周りとぶつかってしまう人がいる。棺野のように、誰にも見えないところで努力を積み重ねている人がいる。そして、そんな人たちを「誘う」一言で、もう一度前へ進ませてくれる人がいる。
部活を思い出す描写が多いのも印象的でした。つらいだけの基礎練、誘惑に勝つこと、仲間との衝突。どれも派手ではないけれど、部活に打ち込んだ経験がある人なら、きっとどこかで自分の記憶と重なると思います。
一人で強くなる物語ではなく、人に気づかれ、人に誘われ、人とぶつかりながら強くなっていく物語。それが『2.43』の始まりでした。
こんな人におすすめ
- 青春スポーツ小説、部活ものが好きな人
- 試合の派手さよりも、人間関係や心のぶつかり合いを読みたい人
- 『ハイキュー!!』などバレーボール作品が好きで、少し違う角度の物語も読んでみたい人
- シリーズものの最初の一冊を探している人
まとめ
『2.43 清陰高校男子バレー部①』は、灰島と黒羽の出会いと衝突、そして周囲の部員たちの努力と想いを描いた、シリーズの出発点となる一冊でした。
この先、二人が清陰高校でどう変わっていくのか。続きの②も読んでみたくなります。